令和8年3月、国土交通省が公表した公共工事設計労務単価。

14年連続の上昇が注目されましたが、今回のデータには、もう一つ見逃せないポイントがあります。
それが、都道府県ごとの労務単価の差です。
・東京都… 27,000円
・鳥取県… 18,200円
参考:令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価について~今回の引き上げにより、14年連続の上昇~
同じ「普通作業員」という職種でも、1日あたり8,800円もの差があります。
この数字を見て、
「東京はやっぱり高いな」
と感じる方は多いでしょう。
ただ本当に重要なのは、この差を、見積や原価管理にきちんと反映できているかどうかです。

同じ職種なのに、ここまで差があるんですね……。

そうじゃ。しかも、これは“感覚”の話ではない。
国が調査して出しておる、今の実勢価格なんじゃよ。
公共工事設計労務単価は、都道府県ごと・職種ごとに設定されています。
つまり、地域が違えば、人件費の前提そのものが違うということです。
それにも関わらず、
「うちの地元の単価感覚のまま見積を作っている」
「東京も地方も、だいたい同じような人件費で考えている」
そんな状態のままだと、都市部では利益を取りこぼし、地方では価格競争に負けるというズレが起きかねません。

同じ職種でも、地域でここまで単価が違うんですね…。

そうじゃ。この差を知らずに見積を作ると危ないんじゃよ。
地域の単価を無視すれば、見積の精度も落ちるし、気づかぬうちに利益も削られてしまうからのう。
今回は、国土交通省のデータをもとに、なぜ都市部と地方でここまで労務単価に差が出るのか。
そして、その差を知らずに見積を作ると、どんな問題が起きるのか。
工事業の見積・原価管理の視点から整理していきます。
国土交通省が公表する労務単価は、全国一律ではありません。
都道府県ごとに、それぞれ異なる単価が設定されています。
では、なぜ地域によって差があるのでしょうか。
それは、労務単価が単なる基準値ではなく、その地域で実際に支払われている賃金水準――いわゆる「実勢価格」をもとに決められているからです。
- 国土交通省は毎年、全国で公共事業労務費調査を実施し、各都道府県ごとに、職種別の賃金水準を集計しています。
- その調査結果をもとに、都道府県別・職種別の労務単価が公表されます。
東京と鳥取で単価が違うのは、実際にその地域で支払われている賃金の差がそのまま数字に表れているということなのです。

じゃあ、東京が27,000円で、鳥取が18,200円っていうのは、
実際にそのくらいの差があるってことですか?

そうじゃ。東京で普通作業員を1日雇うと、27,000円かかる。
鳥取なら、18,200円で済む。
これが、”今の日本の現実”なんじゃよ。
都市部の人件費高騰は、数字で見るとさらに明らかです。
差が大きいのは、普通作業員だけではありません。
他の職種でも、都市部と地方のあいだには、無視できない開きがあります。
・東京都:約32,000円/日
・鳥取県:約22,000円/日
・差額:約10,000円/日
・東京都:約30,000円/日
・鳥取県:約21,000円/日
・差額:約9,000円/日
このように、同じ職種でも、地域が違うだけで1日あたり1万円前後の差が生まれます。
しかもこれは、特別な例ではありません。
実際には、どの職種を見ても、都市部の単価は地方より高い傾向がはっきり出ています。

1日で1万円近く違うとなると、短い工事でも結構大きな差になりますね……。

その通りじゃ。1人1日なら小さく見えても、人数と日数が増えれば、すぐに何十万円という差になる。
じゃから、地域差を知らずに見積を作るのは危ないんじゃよ。
では、なぜここまで地域差が生まれるのでしょうか。
背景には、いくつかの要因があります。
| 生活費の違い | ・東京と地方では、家賃や物価に大きな差。 ・都市部で生活を維持するには、それだけ高い賃金が必要。 ・職人を確保するには、生活コストに見合った水準の賃金がマスト。 |
| 人材確保の競争 | ・都市部は、建設業以外の業種も人材確保に積極的。 ・製造業、物流、設備、サービス業など、競合先が多い。 ・そのため、職人確保は建設業の中だけでは完結しない。 ・他業種との競争が、賃金水準を押し上げている。 |
| 職人不足と需要の集中 | ・都市部は、大規模案件が集まりやすく、職人需要が高い。 ・公共工事も民間工事も重なり、人手を奪い合う状態になりやすい。 ・しかし、働ける職人の数には限りがある。 ・その結果、需要が供給を上回り、賃金が押し上げられる。 |
つまり、都市部の人件費が高いのは、単に「東京だから高い」という話ではありません。
生活コスト、人材獲得競争、そして職人不足という複数の要因が重なった結果として、労務単価に差が出ているのです。

じゃから、同じ職種でも全国一律に考えてはいかんのじゃ。
どこで工事をするかによって、見積の組み立て方そのものが変わるんじゃよ。
ここで、分かりやすい例を考えてみましょう。
たとえば、鳥取県の工事会社が、東京都内の工事を受注するとします。
このとき、見積を作る際に「うちは鳥取の会社だから、鳥取県の労務単価を基準に計算しよう」と考えてしまうと…。

えっ、それってダメなんですか?

ダメじゃ。大事なのは“会社がどこにあるか”ではない。“どこで工事をするか”なんじゃよ。
東京都内で工事をするなら、前提にすべきなのは東京都の労務単価です。
東京都の普通作業員の単価は 27,000円。
もし鳥取県の 18,200円 を基準に見積を作れば、実際にかかる人件費との差額を会社がかぶることになります。
つまり、地方の単価で都市部の工事を見積もると、見積の時点で赤字の種を抱え込むことになるのです。
| 【工事条件】 | ・工事場所:東京都内 ・普通作業員:5人 × 10日間 = 50人日 |
| 【見積時】 | ・鳥取の単価で計算 ・労務費:18,200円 × 50人日 = 910,000円 |
| 【実際】 | ・東京の単価で支払い ・労務費:27,000円 × 50人日 = 1,350,000円 |
| 【差額】 | 440,000円の赤字 |

44万円も…!?

そうじゃ。しかも、これは”普通作業員”だけの話じゃ。
他の職種も含めれば、差額はさらに大きくなる。
地方の単価で都市部の工事を受けたら、大変なことになるんじゃよ。
逆に、都市部の会社が地方の工事を受ける場合も注意が必要です。
東京の会社が鳥取県の工事を見積もるとき、東京の単価 27,000円 をそのまま使えば、鳥取県の単価 18,200円 を前提にした競合より高くなります。

つまり、高すぎて受注しにくくなるんですね。

その通りじゃ。
地方の工事は地方の単価、都市部の工事は都市部の単価。
“工事地の単価で考える”のが基本なんじゃよ。
- 地方の単価で都市部の工事を受けたら → 赤字
- 都市部の単価で地方の工事を見積もったら → 高すぎて受注できない
見積を作るときに基準にすべきなのは、自社の所在地の単価ではなく、実際に工事を行う地域の労務単価です。
労務単価は「うちの地域の感覚」で考えるものではなく、工事地の実勢価格を前提に組み立てるものだと言えます。
「東京の工事だから、人件費は少し高めに見ておこう」
こうした考え方は、一見もっともらしく見えます。
しかし、見積に必要なのは“感覚”ではなく、根拠のある数字です。
問題は、「少し高め」がどれほど実勢価格に近いのか分からないことです。
感覚に頼ったままでは、高すぎて受注を逃すこともあれば、低すぎて利益を削ることもあります。

その点、国土交通省が公表している労務単価なら、都道府県ごとの実勢価格が、公的データとして明示されています。
地域差のある工事ほど、“なんとなくの単価”ではなく、公的データに基づいた単価管理が重要になるのです。

国が調査して公表しているデータなら、信頼できますね。

そうじゃ。しかも、毎年更新される。
“今、この地域で、この職種を雇うと、いくらかかるか”が、最新のデータで分かるんじゃよ。
地域ごとに労務単価が違う以上、見積のたびに「今回は東京だから」「今回は鳥取だから」と、毎回手で調整していては管理が続きません。
こうした手作業は、工事件数が増えるほど抜けやミスの原因になります。
必要なのは、地域ごとの単価を、あらかじめ管理できる形にしておくことです。
では、どうやって地域別の労務単価を管理するか。
例えばハウロードシリーズでは、複数の材料マスタを登録できます。
- 東京用の材料マスタ(労務単価:東京都の単価)
- 鳥取用の材料マスタ(労務単価:鳥取県の単価)
- 大阪用の材料マスタ(労務単価:大阪府の単価)
こうして、地域ごとに異なる材料マスタを作っておけば、見積作成時に「この工事は東京だから、東京用のマスタを使う」と選ぶだけで、適切な労務単価で見積が作れます。

工事地に応じて、材料マスタを切り替えるんですね。

そうじゃ。これで、地方の会社が都市部の工事を受けても、
都市部の単価で正確な見積が作れるんじゃよ。
見積を作るときだけでなく、原価管理でも地域差を前提に考える必要があります。
例えば東京の工事と鳥取の工事を同じ労務単価・同じ感覚で原価管理していたら、結果として「東京の工事は利益率が低い」という数字が出やすくなります。
しかし、それだけを見て「東京の工事は儲からない」と判断してしまうのは早計ですよね。

“東京の工事は利益率が低い=ダメ”って単純な話じゃないんですね。

その通りじゃ。
東京は最初から人件費の前提が高い。
じゃから、地方と同じ基準で見れば利益率が低く見えるのは不思議ではないんじゃよ。
大切なのは、全国を一律の物差しで比べることではありません。
その地域の実勢価格を前提にしたうえで、見積が適正だったか、原価管理が適切だったかを判断することです。
つまり見るべきなのは、「東京という高コスト地域で、その条件に見合った見積・原価管理ができていたか」という点なのです。

ここを取り違えると、
本当は適正に管理できている工事まで「利益率が低い」と誤解したり、
逆に、地域差を理由にして見積の甘さを見逃してしまったりします。
地域をまたいで工事を行う会社ほど、地域ごとの単価差を前提に、見積も原価も見ていく視点が欠かせません。

地域ごとに労務単価が違うことを前提に、
見積も、原価管理も、考える必要があるんじゃよ。
次の3つ、自社に当てはまるものはありませんか?
東京でも、地方でも、同じ労務単価で見積を作っている。
そのままでは、都市部の工事では赤字になり、地方の工事では相場より高くなって受注できない、という事態が起こりかねません。
大切なのは工事を行う地域に合わせて、労務単価を切り替えられる仕組みがあるかどうかです。
御社では、工事地ごとに単価を変える仕組みを持っていますか?
「東京は人件費が高い」
そうした感覚を持っている方は多いでしょう。
しかし、
「東京の普通作業員は27,000円/日」
という具体的な数字まで把握しているでしょうか。

“高い”とは思っていましたけど、具体的な金額までは知らなかったです…。

そこが大事なんじゃよ。
感覚だけで見積を作っておると、実際の人件費とズレてしまうんじゃ。
「なんとなく高そうだから少し多めにする」
こうした調整では、見積の精度は安定しません。
だからこそ重要なのが、
国土交通省が公表している都道府県別の労務単価です。
公的データを基準にすれば、
地域ごとの実勢価格を数字で把握したうえで、見積を組み立てることができます。
では、御社ではどうでしょうか。
国土交通省が公表している都道府県別の労務単価を、見積に反映していますか?
地元の労務単価の感覚のまま、都市部の工事を見積もってしまうと、実際にかかる人件費との差を会社がかぶることになり、利益を大きく削る原因になります。
場合によっては、受注した時点で赤字の種を抱え込んでしまうこともあります。
必要なのは、「うちの地域の単価」ではなく、「実際に工事をする地域の単価」を基準に見積を作れる仕組みです。
御社では、工事地ごとに労務単価を切り替えながら、適正な見積を作れる体制が整っていますか?
1つでも当てはまったなら、地域別の労務単価管理を見直すタイミングかもしれません。
地域ごとに労務単価が違う以上、見積のたびに担当者が手作業で単価を調整していては、管理が続きません。
だからこそ必要なのは、地域差を前提にした単価管理を、仕組みとして持っておくことです。
ハウロードシリーズでは、そうした地域別の単価管理に対応できます。
東京用、大阪用、地元用など、地域ごとに複数の材料マスタを登録できます。
工事地に応じて適切な材料マスタを選ぶだけで、その地域の労務単価を前提にした見積を作成できます。
材料マスタに歩掛と労務単価を登録しておけば、見積作成時は材料を選び、数量を入力するだけです。

地域が変わるたびに、担当者ごとに計算の仕方が違ってたら大変ですもんね…。

そうじゃ。
単価の違いはあっても、計算の流れまで人によって変わっては困る。
仕組みで揃えておけば、どの地域の工事でも、同じ考え方で見積が作れるんじゃよ。
見積だけでなく、原価管理でも地域差を踏まえた分析ができます。

東京の工事と地方の工事を分けて管理することで、
「この地域ではどのくらいの利益率が出ているか」
「地域差を踏まえて、見積と実績にどのくらいズレがあるか」
をデータで確認できます。
東京は 27,000円、鳥取は 18,200円。
同じ「普通作業員」でも、地域が違えば労務単価には大きな差があります。
この差を知らないまま見積を作れば、
都市部では人件費が足りず赤字になり、
地方では相場より高くなって受注を逃す可能性があります。
国土交通省が公表している労務単価は、その地域で実際に支払われている賃金水準(実勢価格)を、公的データとして示したものです。
地域をまたいで工事を行う会社ほど、労務単価を正しく管理する仕組みが重要になります。
まずは資料で、ハウロードシリーズの地域別労務単価管理機能を確認してみませんか?
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