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業務を行う上で欠かせない書類のひとつに見積書作成があります。
特に工事業においては一つの工事に対し何度も再提出を行うことも多く、見積書作成で頭を悩ませる機会は一般業種よりも多いかもしれません。
これまでも作成時に気を付けるポイントの多かった工事業の見積書ですが、近年「法定福利費の内訳を明示した見積書」の作成が求められるようになってきました。
今回は法定福利費について、どのようなものなのかご紹介していきます。
仙人、そもそも「法定福利費」とは何なのでしょう?
うむ、順番に解説していくわい!
法定福利費とは
法定福利費とは、法律上支払い義務のある社会保険料のうち、事業主が負担すべき部分を指します。
なるほど。
「また新しい支出金か…」と戸惑いましたが、新たに登場した費用ではないのですね。
ご名答!元々事業主に払う義務のあった費用じゃ。
では、事業主が負担すべき部分とは具体的にはどんな費用なのでしょう?
法定福利費の具体的な費用としては、下記が挙げられます。
- 健康保険(健康保険料、介護保険料)
- 厚生年金保険(厚生年金保険料、子ども・子育て拠出金)
- 雇用保険料
- 労災保険料※
※後ほど解説しますが、労災保険料は工事業の標準見積書で内訳明示の対象ではありません。
なんだかたくさんありますね…。
どうして法定福利費の内訳明示が必要になったのでしょうか?
法定福利費の内訳明示はどうして必要になった?
工事業の見積書は何度もやり取りを行い作成することも多く、毎回法定福利費の内訳を計算するのは大変ですよね。
それでも法定福利費の明示が必要となった背景には、労働者を適切な保険に加入させるため、必要な金額を確保するという目的があります。
適切な保険…?
うむ。
残念ながら、これまで保険に未加入の企業も存在しトラブルとなることもあったのじゃ。
でも保険に加入していなければ、当然色々と問題も出てきますよね。
その通り。
- 競争上、法令を遵守している企業の方が損をする
- 長期の目線で考えた場合、若い労働者が減ってしまう
そのため、建設業者の社会保険の加入が建設業許可の要件となるなど保険未加入企業への対策が進められてきました。
そうした取り組みの一環として、国土交通省から提示されている「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」が平成27年4月より改訂され、法定福利費を内訳明示した見積書が推奨されることとなりました。
必要な法定福利費を適切に確保するため、元請け・下請け間の「標準見積書」において法定福利費の明示が求められています。
そんなに重要な理由だったのですね。
では、先ほど記載されていた「健康保険」などの費用が、それぞれがどのような内容なのか教えてもらえますか?
法定福利費に含まれる項目
先ほど法定福利費に含まれている費用として、4種類ご紹介させていただきました。
- 健康保険(健康保険料、介護保険料)
- 厚生年金保険(厚生年金保険料、子ども・子育て拠出金)
- 雇用保険料
- 労災保険料※
まずはそれぞれ何に対し保証が与えられる費用なのかを知ることで、保険加入の重要性への理解をより深めていきましょう。
健康保険料
健康保険は病気やけがへ備えた保険です。
病気やけがの他、それらの理由による休業や、出産・死亡にも適用が行えます。
- 対象は雇用期間の定めのない正社員の他、要件を満たすパートタイマー
- 法人として社会保険に加入する場合、会社と被保険者で折半
- 従業員が5人未満の個人事業所など、一部適用除外あり
介護保険料
介護が必要な高齢者を支えるための制度です。
被保険者が保険料を納め、介護が必要と認定されたときから介護サービスを利用できます。
- 介護保険料の支払いは40歳から64歳までの医療保険加入者または65歳以上の人
- 会社と被保険者で折半
厚生年金保険料
70歳未満の人が原則として加入する、公的年金制度にかかる保険料です。
- 対象は70歳未満で、厚生年金保険の適用を受ける企業に勤務する会社員や公務員など
- 会社と被保険者で折半
- 従業員が5人未満の個人事業所など、一部適用除外あり
子ども・子育て拠出金
子育て支援のために充てられる税金で、厚生年金保険料と共に徴収されます。
雇用保険料
退職や失業した際に失業等給付を支給するなど、労働者の生活や雇用の安定を目的とした保険です。
他にも、教育訓練を行い就職の促進も行っています。
- 対象の労働者(一定の条件を満たさない短時間労働者や役員など、一部非対象の要件あり)
- 会社と被保険者、それぞれが定められた保険料率を負担
労災保険料
業務中や通勤中にけがをした際や、就業によって病気等が生じた際に労働者の生活を保障する制度です。
- 受給対象は労働者(パートやアルバイト、日雇など雇用形態に関わらずすべての方)
たくさん種類がありますが、いずれも大切な保証ですね。
法定福利費の内訳明示、重要性が少しずつ分かってきました。
素晴らしい!
実際に見積書へ法定福利費を書いていきたいのですが、このように書く…など、ルールは存在しますか?
工事業の見積書にはどのように書けば良い?
書式は決まったものがある?
法定福利費の内訳明示を行う見積書は、「工事経歴書」のように明確に決まった書式はありません 。
そのため自社の書式でも、法定福利費の内訳が明示されていれば問題ありません。
下請けの法定福利費はどうすればいい?
下請けに施工を依頼する際は、下請け企業の分も含めた法定福利費の明示が必要です。
見積段階では下請けに依頼を行うか決まっていない場合等は、自社が作成する見積書の工賃を元に算出を行います。
法定福利費の範囲は?
そういえば仙人、先ほど「労災保険料は標準見積書で内訳明示の対象となっている法定福利費ではない」と話していましたよね。
それはどういうことなのでしょう?
それはの…。
基本的に見積書に内訳を明示する法定福利費は、「事業者の負担分」となっています。
本人負担分の部分も併せて明示を行っても構いませんが、その場合は「本人負担分も含む」等で明示が必要です。
また、全額が事業主負担分の労災保険料については明示が求められていません。
なるほど。
…あれ?厚生年金って個人事業主だと加入義務がありませんよね。そうなるとどうなるのでしょう?
するどい!
健康保険や厚生年金に加入する義務のない、適用除外も存在します。
- 常時使用する労働者が5人未満の個人事業所
- 一人親方
その場合、各保険の事業主負担は発生せず、適用除外となる現場作業員の法定福利費は内訳明示から除外する必要があります。
えっ、でも見積書の段階では、適用除外の作業員さんの把握なんてできませんよ…。
安心せい。
実務上適用除外となる作業員を把握することは困難です。
そのため見積書の段階では、すべての現場作業員が加入と前提し、健康保険や厚生年金保険に加入するための費用の内訳明示を行うことで対応が行えます。
なるほど、段々分かってきました!
では実際に、法定福利費の算出をしてみたいです。
うむ、複雑な部分もあるからのう。
算出方法や書き方は、次回教えよう。
ここまでも少し複雑だなと思っていましたが、算出はさらに複雑なのですね。
安心せい。
工事業向けの見積・積算ソフトなら、法定福利費の内訳明示は自動で行うこともできるのじゃよ。
法定福利費の計算は、工事業向け見積・積算ソフトにお任せ
見積書の再提出を行う機会も多い工事業において、その都度法定福利費の算出を行うことは手間がかかります。
現在のところ、見積書へ法定福利費を記載しなかったからと言って罰則が与えられるわけではありません。
ですが、法定福利費の内訳を明示された見積書が求められるようになってきているのもまた事実です。
法定福利費の内訳を明示した見積書を作成する際におすすめなのが、工事業向けの見積・積算ソフトの導入です。
手作業では大幅にかかっていた作業時間も、工事業向けの見積・積算ソフトを導入することで解消されます。
工事業向けの見積・積算ソフトを導入することでのメリットは、法定福利費以外にも。
ハウロードシリーズは工事業に特化した、見積・積算・受注・原価・販売管理システム。
そのため法定福利費はもちろん、工事業特有の見積作成から施工後までの管理を一貫してひとつのシステムで管理が行えます。
法定福利費の内訳明示は、ソフトが自動で算出を行い見積書を作成します。
買掛金を元にした経営分析や、今後の資金繰りを確認する上で重要となる支払予定表の作成もスムーズに行えます。
また、見積・積算も連携を行っているシステムのため、分析の結果、今後見積作成を行っていく施工費の値上げを行う際も速やかに見積価格への反映が行えます。
- ソフトが行うため計算ミスはなし、作業効率を大幅にアップ
- 自動で法定福利費の内訳明示を行った見積書を作成
- アラートメッセージより、未入金をお知らせ
今後の工事業の見積書作成を行う上で、法定福利費は非常に重要なものです。
複雑な上に正確さが求められる作業だからこそ、専用ソフトを上手に活用して効率よく作成を行いたいものですね。
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