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工事業の見積書作成で明示が求められるようになった「法定福利費」。
計算方法や記入の方法など、複雑な部分も多くお困りの方も多いのではないでしょうか。
仙人、法定福利費はどのように算出するのでしょうか?
今回は実践編!計算方法を解説していくわい!
ツールの後からは、各項目の計算方法をご紹介しています。
この率はどう求めるの?というものがあれば是非確認してみてくださいね。
法定福利費 無料計算ツール
工事業者様にお役立ちいただける、無料のツールをご用意しました。
是非ご活用いただければ幸いです。
介護保険料は40歳から64歳までの医療保険加入者が対象です。
そのため介護保険料は、従業員の内どれだけの方が対象者かを予め求めた上で算出が必要となります。
具体的な対象者数が不明な場合は協会けんぽの被保険者全体に占める40歳~64歳の割合を用いて算出を行います。
2021年度の割合は55.3%でした。
法定福利費とは
計算方法に入る前に、法定福利費について少しご説明させていただきます。
法定福利費は、法律上支払い義務のある社会保険料のうち、事業主が負担すべき部分を指します。
なるほど。
では事業主が負担すべき部分とは具体的にはどんな費用なのでしょう?
法定福利費の具体的な費用としては、下記が挙げられます。
- 健康保険(健康保険料、介護保険料)
- 厚生年金保険(厚生年金保険料、子ども・子育て拠出金)
- 雇用保険料
- 労災保険料※
※後ほど解説しますが、労災保険料は工事業の標準見積書で内訳明示の対象ではありません。
「法定福利費」と一言で言っても、様々な費用から成り立っているのですね。
大正解!
そしてそれはつまり、法定福利費の計算を行う際も「それぞれの費用」を求める必要があるということじゃ。
なるほど…。
以前仙人が「法定福利費の算出は複雑な部分もある」と話していた理由が少しわかってきましたよ。
鋭い!では早速、一つひとつ順を追って解説していこう。
その前に「法定福利費のそれぞれの費用についてもっと知りたい」という方は上の「法定福利費とは?」の記事を読むのじゃ!
法定福利費の算出方法
まずは基本の方程式を紹介しよう。
法定福利費の算出を行う際にはいくつかの計算式がありますが、まずは基本となる算出方法をご紹介いたします。
法定福利費は、下記のように計算します。
法定福利費 = 労務費 × 対象となる保険の料率
算出式自体はとても単純ですが…先ほどの話を踏まえると、「対象となる保険の料率」がネックとなりそうですね。
労務費も、場合によっては算出に手間がかかるかもしれんの。
労務費の算出
法定福利費の算出を行う上で欠かせないのが労務費です。
ここでの労務費は、工事ごとの費用を指します。
従業員に毎月支払う額ではなく…。
うむ、工事の内容に合わせて労務費も計算しなければならなんのじゃ。
うちの会社は似た工事ばかりですから、それなら簡単です。
本当にそうじゃろうか。
「どんぶり勘定」では損をしてしまうぞよ。
歩掛を用いた労務費算出
労務費の算出方法は色々ありますが、今回は歩掛を用いた算出方法を紹介させていただきます。
工事業の見積作成は、一般業種とは異なり一件ごとに使う材料や取付場所などの条件が異なります。
そのため例え同じような工事であっても、一つひとつの材料ごとに正しく見積算出を行わなければ気が付かないうちに損をしてしまうことも…。最悪の場合、赤字工事にも繋がりかねません。
例えば同じ蛍光灯でも、「埋込形」なのか「直付形」なのか…。
工事の種類でも、作業手間は細かく異なってきますよね。
大正解。
だからこそ、一つひとつの材料で正しく見積算出が必要なんじゃ。
…でも材料ごとに計算なんて、大変な作業ですよ。
そんな時に有効なのが歩掛じゃ。
国土交通省のホームページに掲載されている「公共建築工事標準単価積算基準」にも、各材料の歩掛や係数など、工事費の積算に必要となる事項をまとめた情報が掲載されています。
一つひとつの材料の正しい歩掛を知ることで、工事ごとに数量が変わる工事業の見積書でも正しい作業手間が求められるようになります。
決して簡単な作業ではありませんが、正しい労務費を知る上では大切な作業ですね。
より歩掛について知りたい方は、こちらの記事もチェックじゃよ。
先ほどの計算式の、法定福利費=労務費×までが分かってきました!
法定福利費 = 労務費 × 対象となる保険の料率
うむ、その調子でどんどんいこう。
「対象となる保険の料率」の算出
まずは対象となる保険の内訳についておさらいしましょう。
「対象となる保険の料率」とひとまとめで記載を行っていますが、法定福利費には4つの項目がありました。
- 健康保険(健康保険料、介護保険料)
- 厚生年金保険(厚生年金保険料、子ども・子育て拠出金)
- 雇用保険料
- 労災保険料※
※労災保険料は工事業の標準見積書で内訳明示の対象ではありません。
仙人、先ほどから気になっていましたが 「労災保険料は標準見積書で内訳明示の対象となっている法定福利費ではない」。
これはどういうことなのでしょう?
基本的に見積書に内訳を明示する法定福利費は、「事業者の負担分」となっています。
労災保険料は全額が事業主負担分のため、明示が求められていません。
本人負担分の部分も併せて明示を行っても構いませんが、その場合は「本人負担分も含む」等で明示が必要です。
ではその他の項目の算出方法について教えてください。
健康保険料
健康保険料の算出式は下記の通りです。
健康保険料=標準報酬月額(または標準賞与額) × 健康保険料率
- 標準報酬月額…標準報酬月額を等級ごとに区分した額
- 標準賞与額…1,000円未満で切り捨てた額
- 企業と従業員の負担割合…折半
健康保険料は従業員と企業が折半で負担するのじゃ。
事業主負担分のみを計算する際は「上記の÷2」を行うことを忘れずに。
標準報酬月額の「標準報酬月額を等級ごとに区分した額」というのはどういうことでしょうか?
だんだん分かってきました!
では仙人、「健康保険料率」の数値も教えてください。
ズバリ、企業によるわい。
健康保険には大きく分けて二つの種類があります。
- 健康保険組合
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)
健康保険組合の保険料率は組合ごとに異なります。
全国健康保険協会の保険料率は都道府県によって異なり、年度ごとに適用率が掲載されています。
自社の状況をもとに調べる必要があるのですね。
うちの会社の場合は…仙人、なんとか理解できそうです!
よろしい。次は介護保険料じゃ。
介護保険料
介護保険料の算出式は下記の通りです。
介護保険料=標準報酬月額(または標準賞与額) × 介護保険料率
- 標準報酬月額…標準報酬月額を等級ごとに区分した額
- 標準賞与額…1,000円未満で切り捨てた額
- 企業と従業員の負担割合…折半
介護保険料も原則従業員と企業が折半で負担するのじゃ。
事業主負担分のみを計算する際は「上記の÷2」を行うことを忘れずに。
仙人、「介護保険料率」の数値も先ほど同様企業ごとに変わってくるのでしょうか。
ご名答。組合ごとに保険料率は異なるわい。
ほかにも注意点はありますか?
うむ。介護保険料には重要なポイントが1点あるわい。
介護保険料は第一号被保険者、第二号被保険者の二つの種類があります。
法定福利費で関わってくるのは、 第二号被保険者となります。
対象者 | 徴収方法(原則) | |
第一号被保険者 | 65歳以上の人 | 自治体が年金から天引き |
第二号被保険者 | 40歳から64歳までの医療保険加入者 | 企業が給与から天引き |
40歳からということは…従業員の中でも対象となる人とならない人がいるのですね。
大正解!
厚生年金保険料
厚生年金保険料の算出式は下記の通りです。
厚生年金保険料=標準報酬月額(または標準賞与額) × 厚生年金保険料率
- 標準報酬月額…標準報酬月額を等級ごとに区分した額
- 標準賞与額…1,000円未満で切り捨てた額
- 企業と従業員の負担割合…折半
厚生年金保険料も原則従業員と企業が折半で負担。
事業主負担分のみを計算する際は「上記の÷2」を行うわい。
率も先ほど同様、企業ごとに変わってくるぞよ。
あれだけたくさんの種類の計算が必要…と聞いたときは頭が痛くなりましたが、基本式は同じような計算なのですね。
それが分かってくると、この後もスムーズじゃ。
残すは子ども・子育て拠出金と雇用保険料。
頑張って計算していきましょう!
子ども・子育て拠出金
子ども・子育て拠出金の算出式は下記の通りです。
「子ども・子育て」と名称にありますが、独身や子どもがいない場合でも厚生年金に加入している場合は対象となります。
子ども・子育て拠出金=標準報酬月額(または標準賞与額) ×子ども・子育て拠出金率
- 標準報酬月額…標準報酬月額を等級ごとに区分した額
- 標準賞与額…1,000円未満で切り捨てた額
- 企業と従業員の負担割合…全額事業主負担
事業主負担分ですし、あとは÷2で…
惜しい!
「子ども・子育て拠出金」は全額事業主負担なのじゃ。
なるほど、それなら÷2は行う必要がないのですね。
雇用保険料
雇用保険料の算出式は下記の通りです。
雇用保険料=給与または賞与額×雇用保険料率
- 先ほどまでは1,000円未満を切り捨てた標準賞与額で計算を行っていましたが、雇用保険料では1,000円未満も切り捨てずに算出を行います。
- 雇用保険料率は労働者負担、事業主負担それぞれ公表されているため、負担割合は割愛します。
これまでと違うポイントがいくつかあるのですね。
ほかにも注意点はありますか?
よくぞ聞いてくれた。
工事業では「雇用保険料率」そのものにも注意が必要じゃ。
建設業は、雇用保険料率が一般と異なる
まずは厚生労働省から公開されている雇用保険料率を見てみましょう。
公開されている「雇用保険料率」の表を確認すると、下記の項目に分かれて料率が掲載されていることがお分かりいただけるかと思います。
- 一般の事業
- 農林水産・清酒製造の事業
- 建設の事業
工事業の場合、「①一般の事業」の料率ではなく「③建設の事業」にて算出を行います。
あれ?一般の事業とは別に、「建設の事業」の料率が記載されているのですね。
そうなのじゃ。
ちなみに、「建設の事業」には電気工事業や設備工事業も含むぞよ。
なぜ建設業は、雇用保険料率が一般と異なるの?
「農林水産・清酒製造の事業」「建設の事業」のように区分けされている事業を特掲事業といいます。
建設業は一般の事業とは異なり、現場ごとに雇用契約を結ぶケースもあり雇用期間の短い労働者も多くなっています。
雇用保険は、退職や失業した際に失業等給付を支給するなど、労働者の生活や雇用の安定を目的とした保険です。
一般の事業と比較し支給する割合が高いため、保険料率にも差が生じています。
しかし、事業主にとって落胆する情報ばかりではないぞよ。
そうした一般の事業との雇用差がある建設業ですが、雇用改善の取り組みも実施されています。
助成金もうまく活用していきたいところですね。
ところで仙人、これでやっとすべての算出が終わりました!
おっと、肝心なことじゃが…。
先ほどまで計算したものの合計を算出せねばならんぞよ。
わっ、そうでした…。
この作業を見積書の作成の度に行うのは、中々根気の必要な作業ですね…。
そんな時に役立つのが、工事業向けの見積・積算ソフトじゃよ。
法定福利費の計算は、工事業向け見積・積算ソフトにお任せ
見積書の再提出を行う機会も多い工事業において、その都度法定福利費の算出を行うことは手間がかかります。
現在のところ、見積書へ法定福利費を記載しなかったからと言って罰則が与えられるわけではありません。
ですが、法定福利費の内訳を明示された見積書が求められるようになってきているのもまた事実です。
法定福利費の内訳を明示した見積書を作成する際におすすめなのが、工事業向けの見積・積算ソフトの導入です。
手作業では大幅にかかっていた作業時間も、工事業向けの見積・積算ソフトを導入することで解消されます。
- ソフトが行うため計算ミスはなし、作業効率を大幅にアップ
- 自動で法定福利費の内訳明示を行った見積書を作成
- 見積作成もラクラク!「数量」を入力すればシステムが適正価格を自動で算出
工事業向けの見積・積算ソフトを導入することでのメリットは、法定福利費以外にも。
ハウロードシリーズは工事業に特化した、見積・積算・受注・原価・販売管理システム。
そのため法定福利費はもちろん、工事業特有の見積作成から施工後までの管理を一貫してひとつのシステムで管理が行えます。
見積・積算も連携を行っているシステムのため、分析の結果、今後見積作成を行っていく施工費の値上げを行う際も速やかに見積価格への反映が行えます。
今後の工事業の見積書作成を行う上で、法定福利費は非常に重要なものです。
複雑な上に正確さが求められる作業だからこそ、専用ソフトを上手に活用して効率よく作成を行いたいものですね。