近年当サイトのコンテンツを無断で複製しているサイトを見受けますが、本サイトの掲載内容の一部およびすべてについて、事前の許諾なく無断で複製、転載等を行う行為は、著作権侵害となり法的に罰せられることがあります。
既に一部は施行されているものの、いよいよ2025年4月から建築基準法と建築物省エネ法の改正が施行されます。
工事業に従事する方々にとっては、この改正は見逃せない重要な内容ですよね。
ただ、改正内容が多岐・広域にわたっているため、頭を悩ませている事業者様も多いのではないでしょうか。
改正内容は「建築基準法関係」と「建築物省エネ法関係」の2つに大別され、それぞれで更に細かく改正点が設定されています。
建築基準法関係 | 主に建築確認審査の対象となる建築物の規模や基準の見直しが行われます。 |
建築物省エネ法関係 | エネルギー効率に関する基準がさらに厳格化され、省エネ措置が求められます。 |
更に建築基準法関連は
- 総則関係
- 構造規制の合理化等
に分かれ、そこから先も細かく枝分かれしていくわい。
いくつか割愛しているが、このような形となる。
量が多すぎて、どうすればいいのか…。
安心せい、一つひとつ解説していくわい。
それぞれの改正点に関しては、特にリフォームや新規の建設に関わる方々にとって、大きな影響を及ぼすものです。
これらの改正内容は、一つひとつ分けて調べていくことでより理解が深まるかと思います。
そのため、いくつかの記事に分けて建築基準法・建築物省エネ法を丁寧に解説していきます。
今回は建築基準法関係のうち、「構造関係の改正の全体像」の箇所について解説しよう。
改正建築物省エネ法の背景
そもそも、今回の改正に至ったきっかけはあるのでしょうか?
うむ。
それにはカーボンニュートラルに向けた取り組みが挙げられる。
2050年 | ストック平均で、ZEH/ZEB水準の省エネ性能の確保を目指す |
2030年 | 新築について、ZEH/ZEB水準の省エネ性能の確保を目指す |
そのためには… | 抜本的な取組の強化が必要不可欠 |
その中で、2022年に建築物省エネ法の改正法が公布されました。
これにより、原則すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務付けなどの措置が行われることに。
なるほど。
2050年の目標に向け、段階を踏んで改革が進んでいるのですね。
その通り。
省エネ対策も加速化しており、下記のような取り組みが挙げられる。
省エネ性能の底上げ | ・全ての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務付け(2025年4月~) |
より高い省エネ性能への誘導 | ・住宅トップランナー制度の対象拡充(施行済み) ・省エネ性能表示の推進(2024年4月~) |
ストックの省エネ改修 | ・住宅の省エネ改修の低利融資制度の創設(2023年4月~) ・形態規制の合理化(施行済み) |
再エネ利用設備の導入促進 | ・再エネ導入効果の説明義務(2024年4月~) ・形態規制の合理化(2024年4月~) |
では早速、今回の「構造関係の改正の全体像」の箇所について解説していこうかの。
【木造】簡易な構造計算の対象の木造建築物の規模見直し(法20条1項)
階高の高い3階建て木造建築物等の構造計算の合理化
- 高さ13m又は軒高9mを超える木造建築物を建築する場合…高度な構造計算(許容応力度等計算等)により、構造安全性を確認する必要がある。
そのため、
- 設計
- 工事監理
は一級建築士でなければ行えないのじゃ。
※法第20条第1項第2号
別の記事でも少し取り上げましたが、最近は断熱性向上などのために階高を高くした建物の需要が増えていますよね。
その通り!
加えて、平成30年には下記の内容が改正されたわい。
- 一定の耐火性能が求められる木造建築物の規模…4階建て以上又は高さ16m超に見直し
※第21条第1項
これを踏まえ、下記のように改正されるわい。
- 高度な構造計算までは求めず、二級建築士においても設計できる簡易な構造計算(許容応力度計算)で建築できる範囲を拡大
構造計算が必要な木造建築物の規模の見直し
- H30告示改正…スパンの大きい等の要件に該当する建築物では構造計算において積雪荷重を割増すことになっている。
- 法第20条第1項…2階建以下で延べ面積500㎡以下の木造建築物については、大スパンの屋根であっても構造計算が求められていない。
先ほどと同じで、こちらも大空間を有する建築物のニーズが増えてきていますよね。
その通り!
これらの建築物に対応した構造安全性の確保が必要じゃのう。
そこで今回、木造建築物で構造計算が必要となる規模が引下げ(対象を拡大)となります。
これにより建築物の規模や形状に応じた構造安全性の確保に繋がり、大空間を有する木造建築物においても、外力に対する十分な耐久性を備えることが可能となります。
現行 | 2階以下の木造建築物で構造計算が必要となる規模は、延べ面積500㎡超 |
改正 | 延べ面積300㎡超 |
国土交通省のホームページの表が分かりやすかったので、掲載するわい。
【非木造】簡易な構造計算の対象範囲の拡大
鉄骨造等
現行(2024年12月時点) | ・高さ13m超 または ・軒高9m超の鉄骨造 上記は、高度な構造計算(ルート2以上)が必要 |
改正後 | ・高さ13m超 または ・軒高9m超の鉄骨造 高さ16m以下等の条件を満たす場合、簡易な構造計算の適用が可能 |
アルミニウム合金造においても、同様の合理化が実施されるわい。
改正後は、範囲拡大の対象となる規模の建築物に適用する構造計算ルート1-3が創設されます。
- 高さ16m以下、3階以下、延べ面積500㎡以内、柱相互の間隔6m以下
- 柱及びはり材の幅厚比の制限、ブレースの変形能に応じた応力割増し、偏心率の確認、層間変形角の確認 等
上記において、範囲拡大の対象となる規模の鉄骨造と木造等の併用構造に関する規定が追加されます。
現行(2024年12月時点) | ・柱及びはりが局部座屈によって構造耐力上支障のある急激な耐力の低下を生じないことを確かめる規定を設けている |
改正後 | ・具体的な幅厚比の制限を明確化 |
現行(2024年12月時点) | ・高さ13m超 または ・軒高9m超 上記の薄板軽量形鋼造は高度な構造計算(ルート2以上)が必要 |
改正後 | ・高さ13m超 または ・軒高9m超 上記の薄板軽量形鋼造でも高さ16m以下等の条件を満たす場合は簡易な構造計算の適用が可能 |
【非木造】鋼材のボルト接合の適用範囲の拡大
ボルト接合を適用できる建築物の対象範囲拡大
現行 | 軒高9m超の鉄骨造は、 ・高力ボルト接合 ・溶接接合 ・リベット接合等とする必要がある(ボルト接合の適用は不可) |
改正 | 軒高9m超の鉄骨造でも、高さ16m以下等の条件を満たす場合はボルト接合の適用が可能 【対象】・ 鉄骨造の建築物、高さ16m以下 、3階以下、延べ面積500㎡以内 、柱相互の間隔6m以下 【対象】・ ボルト孔のずれを含めた層間変形角の確認 |
【体制】二級建築士等の業務独占範囲の見直し(建築士法3条)
- 「高さ13m又は軒高9m超」の木造建築物等の新築、増改築等を行う場合は、設計等に高度な構造計算が必要。
- そのため、一級建築士でなければ、設計又は工事監理をしてはならない。
※簡易な構造計算の対象となる「高さ13m以下かつ軒高9m以下」の建築物は二級建築士も設計等を担えることとしている。
今回の改正で、3階建て木造建築物の「簡易な構造計算によって構造安全性を確かめることが可能な範囲」が見直されましたよね。
その通り!
- 現行…高さ13m以下かつ軒高9m以下
- 改正後…高さ16m以下
となるわい。
それに伴い、簡易な構造計算の対象となる建築物の範囲として定められている二級建築士等の業務範囲について、見直し後の構造計算の区分と整合させることとなりました。
- 二級建築士の業務範囲を、「階数が3以下かつ高さ16m以下」の建築物に改正 ※
今回の改正は改正点も多く、対応が大変かもしれませんが、これを機に安全性や効率を高めていく良い機会だと思います。
しっかり対応していきたいところじゃの。
今回説明した内容以外にも改正された点がありますので、全体に目を通すことも忘れずに行いたいところです。
これまでのやり方から変わる部分も多々ありますが、前向きに対応していきたいですね。