近年当サイトのコンテンツを無断で複製しているサイトを見受けますが、本サイトの掲載内容の一部およびすべてについて、事前の許諾なく無断で複製、転載等を行う行為は、著作権侵害となり法的に罰せられることがあります。
工事業では業務を行う上で必要となる書類がいくつもあります。
中には混同されがちな書類もあり、その代表例のひとつが「見積書」と「実行予算書」の違いではないでしょうか。
この2つはそれぞれ異なる役割を持つものの、いずれも重要な書類。
見積書と実行予算書の違いを曖昧にしたまま進行すると、思わぬトラブルに繋がることがあります。
正しく理解し使い分けることで、業務管理がスムーズになり、利益を増加させることにも繋がります。
今回は見積書と実行予算書の違いをわかりやすく解説します。
仙人、上司に「実行予算書を作成して」と頼まれたのですが…。
それってどんな書類なのでしょうか?
うむ、その二つは異なる書類。
今回はそれぞれの役割を元に、違いを解説していこう。
見積書だけでは、工事を管理しきれない
一見、見積書だけで現場を管理できるように思えますが、これには大きなリスクがあります。
見積書はあくまでお客様に提案するための概算であり、実際の費用を管理するためのものではありません。
そもそも、どうして実行予算書が必要なのでしょう。
上司に見積書をそのまま提出してはダメでしょうか?
後ほどじっくり解説するが、見積書はあくまでお客様に提示する概算なのじゃ。
概算…?
でも、見積書に書かれている費用で工事を進めますよね。
「社外」に向けてはそうじゃのう。
実行予算書は、実際に工事を進めるために正確なコストを把握し、利益を確保するために必要な内部資料なのじゃよ。
そのため見積書に頼りすぎてしまうと、予算超過などの思わぬ問題が発生する可能性があります。
見積書は、工事を依頼する際に顧客へ提示する概算書ですが、実際の工事進行では、予想以上のコストが発生することがあります。
このズレが生じる主な原因は、見積書が細かい実費を正確に反映したものではないからじゃ。
でも、毎回かなり細かく積算はしていますよね…?
そうじゃの。
ただ、見積書だけに頼った進行では以下のような懸念があるのじゃ。
- 材料費の価格変動…資材費が予想以上に値上がりし、見積段階では考慮されていなかったコストが発生する恐れ
- 曖昧な見積項目…「設備費一式」など、内容が不明瞭な項目による見積不足
他にも繁忙期の急な人員補充で予算外の労務費が追加された…など、様々なトラブルが考えられます。
見積書だけではトラブルが発生し予定していたよりも費用が膨らんだ際、費用が把握できなくなってしまいます。
これらの要因が重なると、最終的に利益の減少や、場合によっては赤字という結果に繋がりかねません。
確かに例えば材料一つを挙げてみても、工事業で使用する材料価格って日々変動しますものね。
うむ。
見積段階では単価を1万円で設定していたが、発注時に値上がりしてしまった…。ということもあるじゃろう。
そうなれば必然と利益が減ってしまいますし、「材料費」のような分かりやすい費用以外でそれが起きたら…と考えるとゾッとします。
そこで活躍するのが、実行予算書なのじゃ。
なるほど。先ほどの説明で双方の違いは
- 見積書…社外向け
- 実行予算書…社内向け
の点だと説明がありました。もっと詳しく知りたいです。
では、まずは見積書から説明をしていこう。
見積書の役割や内容
工事業において、見積書は取引を進める上で欠かせない書類です。
その主な役割は、お客様に工事費用を提示する…いわば契約をスタートさせるために必要なステップとも言えます。
じゃが、他にもあるわい。
見積書は、工事費用を提示するための書類です。
工事内容と費用を明確にすることで、お客様に安心感を与える役割も担っています。
- お客様に工事費用を提示する
- 契約をスタートさせる
- 工事内容と費用を明確にする
- お客様に安心感を与える
- どのような作業が行われるのか
- その作業にどれくらいの費用がかかるのか
が見積書には書かれていますよね。
その通り。
ここで重要になってくるのは、見積書は「予測値」だということじゃ。
予測値…?
見積書はお客様に向け、費用を説明する目的で作成されます。
工事契約を締結する前にお客様へ提案を行うための書類のため、記載された費用は予測値であり、最終的な確定金額ではないのです。
例えば以下のような理由で、見積書と実際の工事費用に差が生じるわい。
- 詳細な仕様が変更となる…微細な追加工事や、仕様変更などの発生
- 材料費や労務費の変動…見積書作成時点での価格と発注時の価格が異なる
- やむを得ず簡略的な説明を行った箇所
やむを得ず簡略的な説明を行った箇所…?
例えば、見積書はお客様に見せる書類です。
そのため、詳細なコスト内訳や社内向けの内部情報を記載できません。
必要に応じてお客様にとって分かりやすい形式にして記載を行った結果、実際の工事費用とは違った表記方法になっていることがあるのじゃ。
だんだん分かってきました。
確かにそれでは社内での正確なコスト管理や、利益計算には不十分な部分が出てきそうですね。
その通り!
見積書には、予測値に基づく情報が記載されているため、実際の工事費用にズレが生じるリスクがあります。
予測値が実際の費用よりも低く設定されていた場合、思っていたような利益が出ず、最悪の場合は赤字に陥る可能性があります。
そのようなリスクを避けるために活用したいのが、実行予算書です。
実行予算書は工事が進行する際に発生するリスクを回避し、詳細な費用管理を行うことができます。
実行予算書の役割や内容
見積書が顧客に提案を行うための概算書であるのに対し、実行予算書は、工事を円滑に進めるための詳細な内部資料です。
工事が進行する際に発生する詳細な費用を一覧にすることで、実際の状況に応じた費用管理と利益確保がスムーズに行えるようになります。
実行予算書の記載項目
各企業毎に異なるが、実行予算書では一つひとつの材料等に対し、下記の項目を記載すると良いじゃろう。
- 見積金額
- 見積原価額
- 実行予算額
- 工事原価額
- 粗利率
お客様に提示した予測値としての金額。
見積書に記載を行った金額を記載します。
先ほどの説明で出てきた通り、実際の費用とは異なる場合がありますよね。
その通り!
見積書を作成する際に算出した材料費や労務費など、コストとして見込んだ金額。
利益を差し引く前の費用を記載します。
見積原価額は、工事の採算性を判断するための基準となるのじゃ。
見積原価額は実際に掛かった原価額との比較をすることで、計画と実績のギャップを把握する重要な手がかりとなります。
工事を進める上で必要となる費用を、より詳細に記載します。
実行予算額は、工事の進行中にコストを管理する上で重要な指標じゃ。
確かに「この金額を超えたら赤字になってしまう…」などが分かれば、予算超過を防ぐ鍵になりそうですね。
うむ。
仕様変更等で思わぬ費用が発生した際も、実行予算額が分かればコストを再計算できるわい。
- 費用項目ごとの配分の妥当性を検討を行う
- 今後の工事における予算計画の精度を向上させる など、様々な活用が行える
実際の工事を行った上で、発生した全ての原価を記録する項目です。
材料費、労務費、機械費、経費など、工事にかかった具体的な費用を詳細に記載します。
見積段階や実行予算額との比較を行い、コスト管理の精度を高めるのじゃ!
各項目の利益率を示します。
工事における収益性を把握するための重要な数値であり、見積金額や実行予算額を基に計算を行います。
- 計画通りの利益を確保
- 事業全体の健全性を保つ
だんだん実行予算書の役割が見えてきました!
素晴らしい!
復習がてら、改めて解説してみよう。
実行予算書の役割
実行予算書は見積書と並ぶ重要な書類です。
ただし、見積書とは異なり、主に社内での費用管理や現場運営を円滑に進めるために活用します。
正確な実行予算書を作成することは、利益の確保に直結するのじゃ!
実行予算書の主な役割の一つが、工事にかかる全ての費用を詳細に管理することです。
材料費や労務費、経費などの項目を細かく分け、一つひとつ細かな計算を行います。
工事の進行中でも、予算超過を防ぐことができますね。
実行予算書は、見積段階で予定していた費用と実際のコストを比較する基準にもなります。
双方の比較を行うことで、万が一、予算超過のリスクが発生した際も早期に発見することができます。
早く分かればそれだけ対策方法の幅も広がりますよね。
うむ。
そして予定通りの利益が確保されているか確認も行えるのじゃ。
工事が進行する中で、仕様変更や追加工事が発生することは珍しくありません。
実行予算書では、これらの変化に応じた費用計算を行います。
実行予算書を適切に管理することで、変更が発生した際も柔軟に対応し、予算外のコストを最小限に抑え、お客様とのトラブルを防ぐことができます。
実行予算書では粗利率を計算します。
「この粗利率を下回ると赤字工事の危険が高まる」という警戒ラインを明確にすることで、工事進行中であっても利益を常に確認することができます。
- 現場担当者や管理者が常に最新の費用状況を把握できる
- 常に意識ができる
この2点が揃えば、より確実に利益を確保することができるわい。
利益を守るためにも、実行予算書をうまく使うことが大切になりそうですね。
その通り!
最後に、見積書と実行予算書の違いを再度確認してみよう。
見積書と実行予算書の違い
見積書と実行予算書の最も大きな違いは、目的と金額の性質にあります。
- 見積書…社外向けの提案書として、工事費用を概算で提示
- 実行予算書…社内用の管理資料として詳細なコストを記載
見積書 | 実行予算書 | |
目的 | お客様に工事費用を提示し、契約を獲得するための提案書 | 工事進行中の費用管理や利益確保のための社内用管理資料 |
金額 | 予測値 | 契約や発注金額を基に精査された、正確な費用 |
作成タイミング | 工事契約前 | 契約後、工事着工前または進行中 |
見積書はお客様との工事契約を結ぶ上で欠かせない提案書です。
一方、実行予算書は、その後の工事を円滑に行うための計画書として、社内での費用管理を担う重要な役割を果たします。
それぞれ目的や役割は異なるが、どちらも工事業務を行う上では欠かせない書類なのじゃ!
両者を適切に使い分け、活用することで、予算超過や利益減少のリスクを未然に防ぎ、工事の成功率を高めることができるでしょう。
重要性が分かってきました!
ただ…見積書を作るだけでも大変なのに、実行予算書も…となると、正直手が回りません。
それなら、工事業に特化した見積・積算システムがおすすめじゃ!
ハウロードシリーズは、見積データをもとに、必要な情報を自動で取り込み、実行予算書を作成します。
あらかじめ登録されたデータをもとに、例えば、材料費や労務費、機械費などの細かい項目も正確に計算。
手間が大幅に削減されるだけでなく、手作業によるミスの心配もない。
そして正確な実行予算書に基づくコスト管理で、利益率にも繋がるわい。
- 見積書と実行予算書の一貫性が保たれる
- 入力ミスや計算ミスを防げる
- 短時間で正確な実行予算書が完成
また、ハウロードシリーズは「工事の見積作成って、なんだか難しそう…」という方にもおすすめです。
弊社のハウロードシリーズの見積・積算システムは、パソコン1台でご使用いただく場合165,000円(税込)からご用意。
売り切り型で「年度使用料」などの継続利用にかかる費用がないのもポイントじゃ。
- 電気工事業向けEシリーズ
- 設備工事業向けSシリーズ
- 建築工事業向けAシリーズ
相場が高い印象の工事業専用ソフトですが、リーズナブルな価格で豊富な機能を取り揃えています。
電気工事業向けEシリーズ、設備工事業向けSシリーズは職種別の歩掛を4種類まで設定可能です。
- 歩掛や雑材料などの細かな係数は、「数量」を入力すればシステムが自動で算出
- 工事の規模にかかわらず短時間で適切な見積書を作成
- 作業効率を大幅にアップ
見積書は、発注側と請負側のどちらにとっても非常に重要なものです。
複雑な上に正確さが求められる作業だからこそ、専用ソフトを上手に活用して効率よく作成を行いたいものですね。
材料を選んで数量を入力するだけなら、今の方法より時短になりますね!早速社長に教えないと!
ハウロードシリーズなら、見積の作成と一緒に原価や販売の管理も行えるんじゃ!
見積作成で業務効率も利益も上昇じゃ!
基本的な見積書の書き方・書くべき項目 |
積算の方法 |
積算を行う前に |
工事価格の構成と積算 |
直接工事費とは? |
工事業の「見積」と「積算」の違い |
工事業の見積作成で困ったら、国土交通省のデータを活用しよう! |
【年間130万円の差!】工事業向け見積ソフトのコストパフォーマンスは? |
積算に関するおすすめ本3選 |
歩掛とは? |
見積チェックリストの作成方法 |
法定福利費とは?工事業では見積書に内訳明示を |