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見積を作るとき、「原価率はどれくらいに設定すればよいのだろう」と迷ったことはありませんか。

原価率の目安を調べると、いろいろな数字が出てきます。結局、何%にすればよいのでしょうか?

目安となる数字を知りたくなるのは自然なことじゃ。
ただし、他社の原価率をそのまま自社の見積へ当てはめるのは注意が必要じゃよ。

同業他社の原価率が80%なら、うちも80%を目安にすればよい……というわけではないのですか?

同じ建設業でも、工事内容や施工体制によって、かかる費用は異なるからのう。
まずは、原価率が何によって変わるのかを知ることが大切じゃ!
建設業では、材料費や労務費、外注費など、工事ごとに費用の構成が異なります。
自社で施工する範囲や、原価として管理する費用の範囲も会社によって同じとは限りません。
そのため、すべての建設会社に共通する「正しい原価率」を、ひとつの数字で示すことは困難です。
この記事では、原価率の基本的な計算方法から、目安となる数字だけでは判断できない理由、値引きや仕様変更後に確認したいポイントまで、具体例を交えて解説します。
- 原価率は「予定原価÷見積金額×100」で計算する
- 他社の原価率だけを、自社の目標値にしない
- 値引きや仕様変更後は、見積金額・予定原価・原価率・見積上の粗利・粗利率をセットで確認する
- 見積時の予定原価と、工事完了後の実績原価を比較して次の見積に生かす
※記事内の計算例は、考え方を分かりやすくするための架空例です。金額はすべて税抜で統一しています。
建設業の原価率とは?計算方法を確認
自社に合う原価率を考える前に、まずは基本的な意味と計算方法を確認しましょう。

原価率は、工事にかかった原価が売上高に占める割合を示す数字です。
見積段階では予定原価を見積金額で割り、予定している原価率を確認します。
工事完了後は実際原価を実際の売上高で割り、実際原価率を確認します。
| 見積段階 | 予定原価 ÷ 見積金額 × 100 → 予定原価率(見積原価率) |
| 工事完了後 | 実際原価 ÷ 実際の売上高 × 100 → 実際原価率 |
予定原価とは、見積を作成する時点で、その工事に必要になると予測した費用です。
過去の実績、仕入価格、必要な人工などをもとに、材料費・労務費・外注費・経費を積み上げます。
一方、実際原価とは、その工事で実際にかかった費用です。
工事完了後に、実際の材料費・労務費・外注費・経費などを集計して確認します。
見積時点の予定原価と、工事後の実際原価が同じになるとは限りません。
材料価格の変動や追加作業、手戻りなどが発生すれば、実際原価が予定原価を上回ることもあります。

見積金額1,000万円、予定原価800万円の工事なら、原価率はいくらになるかの?

800万円を1,000万円で割るので…原価率は80%です。

正解じゃ。
見積金額1,000万円のうち、予定原価として800万円を見込んでいるということじゃな。

なるほど!
……ただ仙人、そうすると残りの200万円には、どのような意味があるのでしょうか?

その差額が「見積上の粗利」じゃ。見積金額から予定原価を差し引いて求めるんじゃよ。

見積上の粗利は200万円……!
粗利が200万円もあるなんて、嬉しいです!

まてまて。ポイントは「見積上の」という点じゃ。

「見積上の」……?

これは、あくまで見積段階で予定原価をもとに計算した粗利じゃ。
実際の原価が予定どおりになるとは限らんから、最終的な粗利が200万円になると決まったわけではないぞい。

だから、見積の段階では「見積上の粗利」として確認するのですね。
見積段階/工事完了後と二つ書いてあった理由が分かってきました!

素晴らしい!
見積時の予定原価と、工事後の実際原価をそれぞれ確認することが大切じゃぞい。

例えば、見積金額1,000万円、予定原価800万円であれば、見積時の原価率は80%です。
ですが材料価格の上昇や追加作業、手戻り、想定以上の人工などによって実際原価が850万円になった場合、工事後の実際原価率は85%になります。
| 見積時の予定原価率 | 80% |
| 工事後の実際原価率 | 85% |
| 差 | +5% |
原価率が5%上がった結果、見積上では200万円を見込んでいた粗利も、実際には150万円となります。

ですが確認したいのは粗利が50万円減ったという結果だけではありません。
材料費・労務費・外注費・経費のうち、どの費用が、なぜ予定を上回ったのかまで確認することが重要です。
- 材料費が増えていたのであれば、見積に使う材料単価を見直す
- 想定以上の人工がかかっていたのであれば、歩掛や作業条件の設定を見直す
見積時と工事後の原価率を比較し、差が生じた原因を次の見積へ反映することで、自社の実績に合った原価を見込みやすくなります。

積み重ねていくことで、見積精度の向上につながるのじゃ!

ところで仙人。
初歩的な質問かもしれませんが……原価には何があるのでしょうか?
建設工事の原価には何を含める?
ここまで、予定原価率と実際原価率の計算方法を見てきました。
ただし、原価率を正しく確認するためには、そもそも何を原価に含めるのかを明確にしておく必要があります。

国土交通省の資料では、建設業の会計処理における最終工事原価を、材料費・労務費・外注費・経費の4つの要素に分けて集計・管理する考え方が示されています(国土交通省「持続可能な建設業に向けた環境整備検討会 第8回 配布資料」)。
| 費目 | 内容の例 |
|---|---|
| 材料費 | 工事のために購入した資材や部材、仮設材料の損耗分など |
| 労務費 | 工事に従事する、直接雇用の作業員に支払う賃金・給料・手当など |
| 外注費 | 下請会社や協力会社へ支払う工事代金 |
| 経費 | 材料費・労務費・外注費以外で、その工事について発生または負担する費用 |
ただし、実務上の具体的な費用区分や、原価に含めて管理する範囲は、会社の管理方法や会計処理によって異なる場合があります。
例えば同じ費用でも、ある会社では工事ごとの原価に含め、別の会社では会社全体の経費として管理していることがあります。
そのため、同じ「原価率80%」でも、原価に含めている費用の範囲が違えば、単純には比較できません。
原価率を継続して管理するためにも、まずは自社の原価区分を決め、案件や担当者が変わっても同じ基準で計算できるようにしておきましょう。
建設業の原価率は何%が適正?一律に決められない理由
予定原価率と実際原価率を比較できるようになると、次に気になるのが「自社の原価率は高いのか、低いのか」「何%を目安にすればよいのか」という点ではないでしょうか。

業界平均や同業他社の原価率を参考にしたくなるところですが、原価率は数字だけを見て良し悪しを判断できるものではありません。
同じ建設業であっても、工事内容や施工体制、原価に含める費用の範囲によって、その数字が持つ意味は変わります。

施工体制によって原価率の見方が変わる…?
仙人、どういうことでしょうか。

自社の職人さんを中心に施工する会社もあれば、多くの作業を協力会社へ依頼する会社もあるじゃろう。

なるほど!
同じ工事でも、自社の労務費が多い会社と、外注費が多い会社では、原価の構成が変わりますね。


そうじゃ。原価率が同じでも、その中身や費用が増える原因は異なる。
数字だけを比べても実態までは分からんのじゃよ。
そして重要なポイントとして、原価率は低ければ必ずよく、高ければ必ず悪いと単純に判断できるものでもないことが挙げられます。
- 工事の種類や規模
- 材料費と労務費の構成
- 自社施工と外注の割合
- 工期、現場条件、必要な人工
- 原価に含める費用の範囲
- 会社として確保したい粗利

適切な原価率が一律に決まっていないとなると、どうやって自社の目安を決めればよいのでしょう……。

原価率だけを先に決めるのではなく、まずはその工事にかかる予定原価を積み上げるんじゃ。

材料費や労務費、外注費などを計算するのですね。

そうじゃ。その予定原価に、自社で確保したい粗利を加えて見積金額を決める。
そしてできあがった見積の原価率を確認するんじゃよ。
自社に合う原価率を考えるときは、原価率だけを先に決めるのではなく、予定原価と、確保したい粗利の両方から見積金額を考えます。
- この工事で200万円の粗利を確保したい場合、見積金額は次のとおりです。
- 見積金額
800万円(予定原価)+200万円(確保したい粗利)=1,000万円 - この見積金額に対する予定原価の割合を計算すると、原価率は80%になります。
- 原価率
800万円(予定原価)÷1,000万円(見積金額)×100=80%
自社に合う原価率を考えるには、工事にかかる原価だけでなく、会社の経費や必要な利益を踏まえてどれだけの粗利を確保する必要があるかを考えることが大切です。
建設業の見積では、値引きと仕様変更で粗利への影響が違う
見積を作成したあと、お客様から値引きを求められることもありますよね。

例えば予定原価800万円に必要な粗利200万円を加え、見積金額を1,000万円に設定していたところ、「900万円にしてほしい」と言われた場合。
ここで見積金額だけを単純に100万円値引きを行ってしまうと……。
予定原価は800万円のままなので、見積上の粗利は200万円から100万円に減少します。

一方、工事内容を見直して見積金額を900万円に変更する場合は、施工範囲や材料、作業内容などの変更に伴い、予定原価も下がる可能性があります。
つまり、同じ900万円の見積でも、価格だけを値引きする場合と、工事内容も変更する場合では、粗利への影響が異なります。
| 項目 | 当初の見積 | A:価格だけ値引き | B:工事内容も変更 |
|---|---|---|---|
| 見積金額 | 1,000万円 | 900万円 | 900万円 |
| 予定原価 | 800万円 | 800万円 | 720万円 |
| 見積上の粗利 | 200万円 | 100万円 | 180万円 |
| 原価率 | 80% | 約88.9% | 80% |
| 粗利率 | 20% | 約11.1% | 20% |

AとBはどちらも見積金額が900万円なのに、粗利は100万円と180万円。
大きく違いますね…。

うむ。原価率=予定原価÷見積金額×100。
違いは、見積金額と一緒に予定原価も変わったかどうかじゃ。

見積金額だけを見ていては、この違いに気づけませんね。
変更後の予定原価と原価率を確認すれば、粗利への影響も判断しやすくなりそうです。

素晴らしい!
見積を変更したら確認したい5項目
値引きや仕様変更を行うと、見積金額だけでなく、予定原価や原価率、見積上の粗利も変わる可能性があります。
変更後も必要な利益を確保できる見積になっているか判断するために、次の5項目をセットで確認しましょう。
1.見積金額
まずは、値引きや仕様変更を反映したあとの提示金額を確認します。

当初の見積金額からいくら変わったのかだけでなく、追加工事や数量変更なども含めた最終的な見積金額を確認することが大切です。

「100万円値引きした」という差額だけでなく、最終的にいくらで提示する見積なのかを見るのですね。

変更内容が正しく反映されているか確認したうえで、採算も見直すんじゃぞ。
2.予定原価
工事内容を変更した場合は、それに伴って予定原価も変わるか確認します。

- 施工範囲を減らした場合…材料の数量や必要な人工、外注する作業などが変わる可能性
- 工事内容を変えずに価格だけを値引きした場合…基本的に予定原価は変わらない
見積金額だけを変更し、予定原価の見直しを行わないままでは、変更後にどれだけの粗利を確保できるのか正しく判断できなくなります。
3.原価率
変更後の見積金額と予定原価を使って、原価率を改めて計算します。
原価率
予定原価÷見積金額×100
見積金額だけを値引きすると、予定原価が変わらなくても原価率は上がります。
一方、仕様変更によって見積金額と予定原価の両方が下がる場合は、変更する内容によって原価率の動きも変わります。
当初の見積と変更後の見積を比べ、原価率がどの程度変化したのか確認しましょう。

でも、値引きによって原価率が上がったとして、どこまでなら受けてもよいのでしょうか?

その判断がしやすいように、自社で許容できる原価率の目安を持っておくことが大切じゃ。
ただし、値引き後に許容できる原価率の目安は、すべての会社に共通するものではありません。
まずは、自社で確保したい粗利を踏まえて、見積時の原価率を確認します。
工事完了後には実際原価率を計算し、予定との差や、その原因を振り返ります。
- 見積時に原価率を確認する
- 工事後に実際原価率を確認する
- 差が生じた原因を振り返る
- 次回の見積や値引きの判断に反映する
この流れを繰り返すことで、自社の工事実績に合った判断基準を少しずつ整えることができます。

見積を作ったときだけで終わらせず、工事後の実績を次の見積に生かしていくことで、自社に合った目安が分かってくるのですね。
4.見積上の粗利
変更後の見積金額から予定原価を差し引き、見積上の粗利を確認します。
見積上の粗利
見積金額-予定原価
値引き額と粗利の減少額が、必ず同じになるとは限りません。

価格だけを値引きした場合は、その値引き分が粗利の減少につながります。
一方、仕様変更によって予定原価も下がる場合は、値引き後も一定の粗利を残せる可能性があります。
5.粗利率
粗利金額だけでなく、見積金額に対してどの程度の粗利を確保できるのかも確認します。
粗利率
見積上の粗利÷見積金額×100
粗利金額が同じでも、見積金額が異なれば粗利率は変わります。
そのため金額と割合の両方を確認することで、変更後の見積が自社の基準に合っているか判断しやすくなります。
原価率と粗利を確認し、利益を確保できる見積を作成する
工事の利益を確保するためには、見積金額だけで受注の可否を判断するのではなく、予定原価・原価率・見積上の粗利まで確認しながら見積を作成することが大切です。

- 見積金額が高くても、材料費や労務費、外注費などの予定原価が多ければ、十分な粗利を確保できるとは限らない
- 見積金額が下がっても、工事内容の変更に伴って予定原価も下がれば、必要な粗利を確保できる場合がある
見積を作成するときは、まず工事に必要な費用を積み上げ、予定原価を算出します。
そこへ自社で確保したい粗利を加えて見積金額を決め、原価率と粗利率を確認しましょう。
また、見積を一度作成して終わりではありません。
数量や単価を変更したときや、値引き・仕様変更を行ったときは、その都度、予定原価や原価率、見積上の粗利がどのように変わったのかを確認する必要があります。

工事完了後に実際原価を確認すれば、見積時の予測が合っていたか振り返れますね。

予定原価と実際原価を比較して、その結果を次の見積に反映することが、見積精度の向上につながるんじゃよ。
例えば、予定より材料費が増えていた場合は、次回の見積に使用する材料単価を見直します。
想定以上の人工がかかっていた場合は、歩掛や作業条件の設定を見直す必要があるでしょう。

原価率は、単に「高い」「低い」を判断するための数字ではありません。
この条件で工事を受注しても必要な利益を確保できるかを判断し、次の見積の精度を高めるための指標として活用しましょう。
ハウロードシリーズでできること
見積の採算を確認するためには、材料費や労務費などの予定原価を正しく積み上げ、見積金額に対して必要な粗利を確保できているか確認する必要があります。
しかし、材料や人工を入力するたびに別の表や電卓を使って計算していると、確認に手間がかかります。
数量や単価の変更、値引き、仕様変更が重なれば、どの変更によって粗利がどれだけ動いたのか分かりにくくなることもあるでしょう。
ハウロードシリーズでは、見積明細を作成しながら、原価・粗利金額・粗利率を同じ画面で確認できます。

材料や人工を入力したときだけでなく、数量や単価を変更したときも、その内容に応じた数字が画面へ反映されます。
- 材料の数量を増減したとき
- 材料や器具の単価を変更したとき
- 必要な人工を追加・削除したとき
- 撤去費や運搬費などを追加したとき
- 見積金額を値引きしたとき
見積を変更するたびに原価や粗利を別途計算し直すのではなく、「この金額で受注した場合、どれだけの粗利を確保できるか」を確認しながら見積内容を調整できます。
特に値引きを求められた場合は、値引き額だけで判断せず、変更後の粗利金額や粗利率を確認することが重要です。
自社で確保したい粗利と見比べることで、どこまで価格を調整できるのか判断しやすくなります。
見積金額だけでなく、原価や粗利まで確認しながら作成できる環境を整えることで、感覚だけに頼らず、数字をもとに受注条件を判断しやすくなります。

ハウロードシリーズは、見積・積算、受注原価管理、販売管理の3つから、必要な機能だけ自由に組み合わせできる工事業向けシステムです。
- 電気工事業向けEシリーズ
- 設備工事業向けSシリーズ
- 建築工事業向けAシリーズ
必要な機能だけ選んで導入できるため、「まずは見積業務から整理したい」という会社様から、「原価・利益まで一元管理したい」という会社様まで、運用に合わせたご提案が可能です。
工事業専用ソフトは高額な印象を持たれることもありますが、ハウロードシリーズでは継続費用不要の買い切り版・サブスクリプション版二つをご用意。リーズナブルな価格帯から導入可能な構成もご用意しています。
ハウロードシリーズは、電気工事・設備工事・建築工事向けの業務システムです。
見積・積算から受注後の原価管理、請求・販売管理まで、必要な機能を組み合わせて導入できます。
業種別の専用シリーズをご用意。自社に必要な業務・機能に合わせてお選びいただけます。

月額制と買い切り型、二つの導入方法から選べるぞよ。
まずは資料で、自社に合う製品を確認してみるのじゃ!
