近年当サイトのコンテンツを無断で複製しているサイトを見受けますが、本サイトの掲載内容の一部およびすべてについて、事前の許諾なく無断で複製、転載等を行う行為は、著作権侵害となり法的に罰せられることがあります。
銅など工事業で欠かせない資材の価格が高騰している昨今。
市場価格の変動に対応した見積もりを作成することが、赤字工事を防ぐための重要なポイントになっています。
損をしないためにも一つひとつの工事で「積算」が重要だと話していましたね。
その通り。
正しい積算を行う上では、工事業の見積もりを構成している費用にどのようなものがあるのかは欠かせない知識。
今回はその中でも一般管理費に的を絞って解説していきます。
工事業の価格構成
工事業の見積は、大まかに分けて下記の構成となっています。
図を見ていただければ、今回解説する「一般管理費」は工事価格から派生していることがお分かりいただけます。
一般管理費は「工事価格」の中に含まれるのですね。
ただ仙人、一般管理費は「共通費」というものに含まれている…と聞いたことがあるのですが、共通費はどこに書かれているのでしょう?
素晴らしい。
まずは共通費についてを解説しよう。
共通費とは
若葉ちゃんの言う通り、一般管理費は「共通費」の一部なのじゃ。
共通費は3つの項目から構成されています。
- 共通仮設費
- 現場管理費
- 一般管理費
なるほど、そういうことだったんですね。
ただ、先ほどの図を見ていると、それぞれ全然違う費用に思います。
どうしてわざわざ一緒にした名前を設けているのでしょうか?
うむ、まずはそれぞれの費用の中身を紹介してみようかのう。
共通仮設費 | 共通の施設や設備の設置に関連する費用。 敷地測量や敷地整理、道路の占用や使用料など、工事を始める前に必要な準備に関連する費用(準備費)など。 |
現場管理費 | 建設現場の運営や管理にかかる費用。 現場で働く労働者の管理に関連する費用(労務管理費)など。これには労働者の募集、福利厚生、安全対策、研修などが含まれます。また、災害時の事業主が負担する給付も含まれます。 |
一般管理費 | 直接的に工事には関連しないものの、日常的に発生する経費。 本店や支店の従業員に対する給料、諸手当、賞与などの費用(従業員給料手当)や建物や機械、装置などの修繕や維持管理に必要な費用(維持修繕費)など。 |
もしかして、いずれも「工事そのものに直接関係しない」というのが共通点ですか?
するどい!
共通費は工事の施工には直接関係しないものの、施工にあたり必要となる費用を指します。
確かに私たちの給与は工事には直接関係しませんが、必要な費用ですよね。
今回解説する一般管理費は、その中でも直接的に工事には関連しないものの、日常的に発生する経費を指しています。
なるほど…!
同じ「工事には直接関係しない」でも、中身が違うのですね。
その通り!
では、具体的にどのようなものが一般管理費に当たるのでしょうか?
一般管理費の構成
一般管理費は、直接的に工事には関連しないものの、日常的に発生する経費と前述しました。
この章では、具体的にどのようなものが含まれるのかを解説していきます。
- 役員報酬等
- 従業員給料手当
- 退職金
- 法定福利費
- 福利厚生費
- 維持修繕費
- 事務用品費
- 通信交通費
- 動力用水光熱費
- 調査研究費
- 広告宣伝費
- 交際費
- 寄付金
- 地代家賃
- 減価償却費
- 試験研究償却費
- 開発償却費
- 租税公課
- 保険料
- 契約保証費
- 雑費
たくさんありますね。
名前だけでイメージがつかめるものもありますが、詳しく知りたいです。
国土交通省のホームページで公開されている「公共建築工事共通費積算基準」では、それぞれの項目について書かれているわい。
今回はその情報をもとに、更に詳しく解説していくぞよ。
役員報酬等
取締役及び監査役に要する報酬及び賞与(損金算入分)
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
役員報酬は、企業の取締役や監査役などの役員に支払われる給与や賞与です。
役員報酬がここに入ってくるんですね。
うむ。
次で説明するが、一部の従業員の給与も一般管理費に当てはまるわい。
一部の…?
従業員給料手当
本店及び支店の従業員に対する給与、諸手当及び賞与(賞与引当金繰入額を含む。)
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
私たちの給与も一般管理費に当たるんですね。
では、現場で作業をしてくださる方はどうでしょう?
うむ、その場合は「現場管理費」に当てはまるわい。
退職金
本店及び支店の役員及び従業員に対する退職金(退職給与引当金繰入額及び退職年金掛金を含む)
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
退職金は、従業員や役員が退職する際に支払われる金額で、その人の勤続年数や終身雇用への貢献を考慮して決定されます。
退職金は、従業員が安心して退職できるよう、企業が支払うサポートの一部です。
言わば未来に向けた支援じゃのう。
給与の際と同じで、ここでも「本店及び支店の役員及び従業員に対する」という点に注意が必要ですね。
法定福利費
本店及び支店の従業員に関する労災保険料、雇用保険料、健康保険料及び厚生年金保険料の事業主負担額
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
仙人、法定福利費とは何でしょうか?
具体的には、このような費用が当てはまるのじゃ。
- 健康保険(健康保険料、介護保険料)
- 厚生年金保険(厚生年金保険料、子ども・子育て拠出金)
- 雇用保険料
- 労災保険料※
※労災保険料は工事業の標準見積書で内訳明示の対象ではありません。
「法定福利費」と一言で言っても、様々な費用から成り立っているのですね。
うむ。
ただし、先ほどまでと同様「一般管理費」の範囲、という点に注意が必要じゃ。
福利厚生費
本店及び支店の従業員に対する慰安、娯楽、貸与被服、医療、慶弔見舞等の福利厚生等に要する費用
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
従業員の満足度や長期的な健康と安全を考えれば、必要な費用ですよね。
維持修繕費
建物、機械、装置等の修繕維持費、倉庫物品の管理費等
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
維持修繕費は、企業が保有する建物や機械、装置などの修理に関連する費用が含まれます。
維持修繕…という言葉の通り、定期的なメンテナンスの代金も含まれます。
これには倉庫内の物品の管理費用も含まれます。
設備の機能を維持し、予期せぬ故障や劣化による業務の中断を防ぐために必要な費用を指します。
設備の寿命を延ばし、長期的に運用するためには必要な投資じゃのう。
事務用品費
事務用消耗品費、固定資産に計上しない事務用備品、新聞参考図書等の購入費
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
通信交通費
通信費、旅費及び交通費
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
動力用水光熱費
電力、水道、ガス等の費用
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
動力用水光熱費は、企業活動に必要な電力、水道、ガスなどの消費にかかる費用を指します。
冷暖房、照明など…日々の作業を行う上で欠かせない費用ですね。
調査研究費
技術研究、開発等の費用
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
調査研究費は、新しい技術や製品の開発、既存技術の改善を目指すための研究開発活動にかかる費用です。
例えば市場調査、実験材料の購入なども当てはまるわい。
広告宣伝費
広告、公告又は宣伝に要する費用
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
チラシの作成やWEB広告の費用などですね。
うむ。新しい顧客を増やす上では必要な費用じゃの。
交際費
得意先、来客等の接待、慶弔見舞等に要する費用
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
得意先や来客への接待、慶弔見舞いなど、良好なビジネス関係の構築と維持に関連する費用です。
交際費には食事会、ギフト、記念品、慶弔関連の支出が含まれます。
寄付金
社会福祉団体等に対する寄付
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
寄付金は、社会福祉団体や非営利組織など、社会的な課題を支援するために企業が提供する金銭的な支援です。
企業の社会的評価を高めるとともに、地域社会や社会全体への貢献を行います。
CSR、「企業の社会的責任」の一環としても最近耳にするようになりましたね。
地代家賃
事務所、寮、社宅等の借地借家料
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
事務所の家賃の他、寮などの費用もここに入るんですね。
うむ!
ただし工事現場で使用する現場事務所などの仮設建物や、遠方の現場等で使う宿舎は「共通仮設費」となるから気を付けるのじゃよ。
減価償却費
建物、車両、機械装置、事務用備品等の減価償却額
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
減価償却…?
簡単に言えば、「モノの価値が時間とともに少しずつ減っていくこと」を計算したものじゃ。
試験研究償却費
新製品又は新技術の研究のための特別に支出した費用の償却額
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
先ほど似たような費用で「調査研究費」がありましたよね。
違いは何でしょうか?
簡単に書けば、研究開発に関連する費用のうち、
- 調査研究費…すぐに使用する費用
- 試験研究償却費…先ほどの減価償却費のように研究で使ったお金が時間とともにどう減っていくかを計算したもの
じゃよ。
開発償却費
新技術又は新経営組織の採用、資源の開発並びに市場の開拓のため特別に支出した費用の償却額
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
租税公課
不動産取得税、固定資産税等の租税及び道路占有料その他の公課
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
租税公課…?
「租税」と「公課」を併せた言葉じゃよ。
- 租税…国や地方に納付する税金
- 公課…国や地方公共団体が徴収する手数料など
なるほど。少しずつイメージが湧いてきました。
当てはまる範囲は色々あると思いますが、今回は一般管理費の中の…ということですよね。
その通り!
そして一般管理費とは、「直接的に工事には関連しないものの、日常的に発生する経費」じゃったのう。
租税公課に含まれる費用には、例えば工事契約書等の印紙代・申請書・謄抄本登記等の証紙代などもあります。
ただ、これらのものは「直接的に工事には関連しないものの、日常的に発生する経費」とは少し違う気がします。
その通り。上記の印紙代や証紙代は現場管理費に含まれる。
では、どのような費用が一般管理費の租税公課に当てはまるのでしょうか?
- 不動産取得税
- 固定資産税等の租税
- 道路占有料その他の公課
だんだん分かってきました!
ただ、区分けが難しそうですね。
- 現場管理費…建設現場の運営や管理にかかる費用
- 一般管理費…「企業全体の運営や管理に関わる、より広範な費用
ということを覚えておくと良いわい。
保険料
火災保険その他の損害保険料
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
保険料も先ほどの租税公課と同様、「直接的に工事には関連しないものの、日常的に発生する経費」の範囲、ということですね。
素晴らしい!
契約保証費
契約の保証に必要な費用
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
契約の信頼性を高める上では、欠かせない費用ですね。
雑費
社内打合せの費用、諸団体会費等の上記のいずれの項目にも属さない費用
公共建築工事共通費積算基準 – 国土交通省のホームページ
ここまで色々な費用の解説をしてきたが、それ以外にも必要な費用があるわい。
上記の特定のカテゴリーに分類されない様々な必要経費がその他に含まれます。
例えば会議に必要となる費用などが含まれます。
一般管理費の算出方法
なるほど、だんだん分かってきました!
素晴らしい!
ただ、仙人…1件1件の工事で積算を行うことが大切と話していましたが…。
これら一つひとつの費用を計算するなんて、到底できそうにありません…。
安心せい、一般管理費は「比率」でも計算が行えるのじゃ。
なるほど、比率…!
工事原価に対する比率で算定
一般管理費は工事原価に対する比率により算出します。その際に計算するための比率は、一般管理費費率といいます。
一般管理費率の計算式は、国土交通省のホームページでも公開されています。
- 建築工事
- 電気設備工事
- 機械設備工事、昇降機設備工事
ただし、一般管理費率に含まれない内容もあるので注意が必要じゃ。
それらは必要に応じ、別途計算を行う。
なるほど、やはり一朝一夕で出来るものではなさそうですね…。
そうじゃのう。
そして一般管理費率はあくまで積算のうちの1つの項目じゃ。
そうでした。
一般管理費率の他にも、共通仮設費や現場管理費…そしてそもそも直接工事費だって控えていますよね。
うむ。
じゃが、いずれも適正価格の見積書を作る上では重要なことばかり。
そこで、工事業専用の積算見積ソフトを使うという手もあるぞよ。
積算を簡単に行うには工事業専用積算見積ソフトがおすすめ
今回ご紹介した積算は、工事業専用の見積ソフトをご使用いただければ簡単に行えます。
非常に複雑であると同時に正確さが求められる工事業の積算作成作業。
弊社工事業用見積ソフト「ハウロードシリーズ」をご活用頂く企業様が増えてきています。
弊社のハウロードシリーズの見積・積算システムは、パソコン1台でご使用いただく場合165,000円(税込)からご用意。
売り切り型で「年度使用料」などの継続利用にかかる費用がないのもポイントじゃ。
- 電気工事業向けEシリーズ
- 設備工事業向けSシリーズ
- 建築工事業向けAシリーズ
相場が高い印象の工事業専用ソフトですが、リーズナブルな価格で豊富な機能を取り揃えています。
電気工事業向けEシリーズ、設備工事業向けSシリーズは職種別の歩掛を4種類まで設定可能です。
- 歩掛や雑材料などの細かな係数は、「数量」を入力すればシステムが自動で算出
- 工事の規模にかかわらず短時間で適切な見積書を作成
- 作業効率を大幅にアップ
見積書は、発注側と請負側のどちらにとっても非常に重要なものです。
複雑な上に正確さが求められる作業だからこそ、専用ソフトを上手に活用して効率よく作成を行いたいものですね。
新人OL 若葉ちゃん
仙人